写真Tシャツレーベルを立ち上げたきっかけと経緯

pictonicoを立ち上げるまでの経緯を綴ってみます。

写真Tシャツというの初めて意識して見て印象に残っているのは、2006年のユニクロのUTというTシャツのシリーズの森山大道Tシャツです。

ちょうどユニクロのWEBマガジンで「UTアーカイブを振り返る」という記事が公開されたばかりで、その森山大道Tシャツも見れます。
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/feature/ut-magazine/s35/

ユニクロの売り場でも大きく展開していて、他にアラーキーTシャツも目を引きました。

このあとから、特に森山大道さんはヒステリックグラマーとのコラボだったり、写真展の際にグッズとして写真作品をプリントしたTシャツを販売するというスタイルも徐々に写真業界に広がっていったように思います。

ただ、そういうのを面白い試みだなあと眺めつつも、実際は買うことも着ることもありませんでした。僕は白や黒のモノトーンの服が似合わなくて着こなすことができないなと、この頃はだいたい白の写真Tシャツがほとんどだったからです。もちろん探せば他の色のTシャツもあったと思いますが。

その後、pictonicoのコンセプトに直接影響を与えた、というか参考にさせてもらった2つのプロジェクトに出会いました。

フォトカード SNAP-SHOT

まずは、「楽しむ&参加する新しいPhotoCardコレクション」というコンセプトの「SNAP-SHOT」というプロジェクト。

写真作品をこれまでのような「写真プリント」ではなく、「フォトカード」として印刷し、L判サイズからA4サイズまで、気軽な価格で購入できるというものでした。オンラインストアだけでなく、ヴィレッジヴァンガードや東急ハンズのお店でも取り扱いがあって、僕は尾仲浩二さんのフォトカードを買って持っていました。

作品の公募もしていて、尾仲さんのような写真家から、新人やまだ実績のない人たちにも作品が流通する門戸が開かれていて、面白いシステムだなと思っていました。

僕は2011年から作家の一人として作品を扱ってもらっていて、実は岩倉しおりさんの作品もこの頃SNAP-SHOTで扱っていたんですよね。

残念ながら今は終了してしまいましたが、「SNAP-SHOT」のコンセプトはpictonicoをスタートするときに確実に受け継いでいます。

SNAP-SHOT
当時のサイト(Wayback Machineから)

写真Tシャツ Oh! Snap Photography

もうひとつは、2012年に偶然見つけたアメリカの「Oh! Snap Photography/T-shirt Project」という写真Tシャツのサイト。

Tシャツの色やシルエットが今までになくファッショナブルで、独特の写真の色合いやユーモアのある写真など、着たい!と思うTシャツがいくつも並んでいて、その中でもTate Foleyという現代アーティスト/写真家の「PING PONG」という作品のプリントTシャツを買いました。海外発送もしていたので日本からでも買うことができたのです。

上半身のポートレートと手に持った卓球のラケットのコラージュ作品。

Tate Foley
https://www.tatefoley.com/

この「Oh! Snap」も、Tate Foleyのようなアーティスト、写真家の作品だけでなく、フォトコンテストでの公募もしていて、参加する・楽しむというコンセプトがあったと思います。

こちらも残念ながら今は終了してしまいサイトは見ることができませんが、wayback machineで当時のスクリーンショットを貼っておきます。

oh! snap

写真Tシャツレーベルのコンセプト作りから始動へ

SNAP-SHOTに参加したり、こういったサイトに触れてTシャツを実際に手にしてみながら、写真作品をもっと身近にして楽しむということを発信したい、自分が着たいと思える写真Tシャツを作りたい、と思い立ったのが2012年で、そこからいろいろ準備を進めました。

当時からオンデマンドで1点の注文からプリントTシャツを作るサービスはありましたが、やはり僕は写真は大量に複製されて出回るのが面白いと思っていて、生地へのインクジェットプリントができるんだったら、それって写真が印刷される工程そのものではないか、と感じ、量産化するという前提でコンセプトを固め、実現に向けて動きました。

そう考えると、Tシャツの生地は、写真にとっての印画紙や印刷紙と同じで、プリントする人だって誰でもいいわけではありません。生地について調べたり、プリント加工工場に足を運んで直接話をしてきました。そして、Tシャツがそうやって写真の作品として成り立つんだったら、作家のサインを入れるべきだなと思ったり。

また、最も重要なのが、Tシャツレーベルとしてのフォトグラファー、写真作品のセレクトです。写真集、インターネット、Flickrや写真ブログなど、膨大な写真を見ながら、それがTシャツになった図を想像してはセレクトを考えていきました。

そして、もともと写真好きな人に見てもらうだけではなく、Tシャツをきっかけに写真というカルチャーに興味を持ってもらいたいと思って、TシャツにL判の紙焼きプリントを同封することにしたり、写真集を販売することにしたり、サイトの構造もフォトグラファーの写真や活動に興味がいくよう工夫したり、構想もどんどん広がっていきました。

ショップの構築にあたっては、自分がOh! Snapに出会ってアメリカから写真Tシャツを買ったように、英語展開、海外への販売も最初から決めていて、具体的に動き始めるといろいろと苦労もありましたが、ちょうど一年後の2013年の夏に無事スタートすることができました。

幸いにもこれまで国内だけでなくアメリカ、フランスからTシャツや写真集を買ってくれた方がいて、海外のフォトグラファーから「コンセプト面白いね!一緒にやりたい!」と連絡をもらったこともあり、今後も国境を問わず発信し続けていきたいと思っています。

現在、新作のリリースもなくゆっくりしたペースになってしまいましたが、新しい展開、作品も考えていますので、これからもpictonicoをよろしくお願いします。