Tシャツへの写真プリントについて (2)

前回はTシャツと写真の色味についての話でしたが、今回は実際のプリントについての話です。

pictonicoの写真Tシャツはダイレクトインクジェットプリントという方法でプリントされています。専用の機械でTシャツの生地に直接インクを吹き付けて定着させる方法です。機械でのプリントなのですが、そのクオリティについては誰がやっても同じというわけではもちろんありません。これはラボでの機械焼きの写真プリントや印刷においても同じですね。
自宅でインクジェットプリンタで写真を紙にプリントする場合でも同じことが言えると思います。用紙やデータに適したソフトの設定、色管理、各インク毎の出力調整やプリンタのメンテナンスなど、人間のオペレーションが入ることによりはじめて綺麗に(写真家が意図するように)プリントすることができるのです。

そして写真のプリントとは「第二の撮影」とも言われるように、写真家にとって作品の良し悪しを大きく左右する工程です。
写真家自らプリントする場合はもちろん、信頼のおけるアシスタントがプリントする場合や、あるいは「プリンター」と呼ばれるプロフェッショナルの職人に任せる場合もありますが、どのケースでも写真家の表現の意図をどうプリントに落とし込むかがとても重要となります。
例えば写真集を出版する際も、写真家自ら印刷所に通い色校正を細かくチェックしながら、印刷オペレーターと打ち合わせを重ねる、という光景は珍しくないと思います。

さて、pictonicoの写真Tシャツは岡山県の倉敷市児島の工場でプリントされています。児島といえば「国産ジーンズの聖地」として有名ですね。もともと江戸時代より綿の栽培に適した気候風土、染色に必要な水の確保に適した土地の特性などから繊維産業の中心地だったそうです。その児島に大正時代に創業し現在も続く老舗の衣類加工工場で、衣類の染色やプリント加工に精通した職人さんたちの手によって写真がTシャツへプリントされます。この時にこちらのプリント意図がより具体的に伝わるように前回ブログで書いた色見本を用意して仕上がりイメージを共有しているのです。

写真Tシャツ フォトTシャツ 羽田誠
※羽田誠”sheep”Tシャツ。生地へ直接プリントされるため写真の表面は独特の質感。

ちょうど昨年の9月、Tシャツのプリントについて調べていて広島から児島へ足を運びこの工場を訪問しました。写真Tシャツの構想、プリントのクオリティについても親身に相談にのってくれて、突然のお願いにも関わらず快く工場内のプリント現場の見学もさせてくれました。伝統産業である衣類のものづくりへの誇りと熱意、そして新しいことへの研究熱心さを感じ、「写真のプリントは安心してお願いできる」と思ったのでした。

児島 児島 児島 児島
※児島は瀬戸内海に面し、繊維業以外にも塩業や漁業で栄えてきた歴史があります。

pictonicoのTシャツの襟元に写真家のサインが入るのはこのようなプリントへのこだわりの証明でもあります。